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会計基準や税法が毎年のように改訂される現在、経理は常にキャリアアップを図る必要があります。資格取得を通じて経理の専門知識を身につけることで、経営管理の視点や財務管理、税務申告に必要なスキルを習得できます。
ただ、経理の資格は種類が多すぎてどれがいいのかわからない、と考えられている方もいると思います。目的に合った資格の学習を行わないと、時間をかけて得た資格と知識が無駄に終わってしまう可能性があります。
- 資格が多すぎて選べない(簿記・FP・税法?)
- 資格がどのように経理の実務に役立つかわからない。
- 働きながら取得できる資格はどれ?
この記事では、経理歴15年のメーカー社員(簿記1級保有)である筆者が、経理系資格をレベル別に紹介したうえで、おすすめの経理資格5選を解説しています。読むことで、経理資格への理解を深め、目的に合った資格を見つけることができます。
僕自身、簿記1級の知識が、経理業務を行う中で判断に迷ったときの指針となっていました。
業務ごとの資格取得の優先順位は、別記事で解説しています。
>>【未経験~経理担当必見】実務に役立つ経理資格取得のおすすめ優先順位を現役経理が紹介します!
経理資格の必要性とは?経理職に資格が必要な理由
経理の仕事は、企業のお金の動きを管理し、正確な財務状況を把握する重要な役割を担います。この責任ある仕事を遂行するためには、専門的な知識と技能が求められます。経理資格は、その知識と技能を証明する手段となります。
経理が資格を取得するメリット・デメリット
メリットは以下の通りです。
- 専門知識の証明: 経理資格は、経理業務に必要な知識を持っていることを証明します。これにより、採用時や昇進時に有利に働くことがあります。
- 信頼性の向上: 資格を持っていることで、職場内外での信頼性が高まります。正確な会計処理は、企業運営において不可欠であるため、この信頼は非常に重要です。
デメリットは以下の通りです。
- 取得の難易度: 経理資格は、専門性から、取得するのが難しいものもあります。難易度の高い資格の取得には、多くの時間と労力が必要であり、繁忙期の業務を行いながらの学習は困難な場合があります。
- 継続的な学習の必要性: 経理に関わる基準や法律は毎年変わるため、資格取得後も最新の知識を維持するために継続的な学習が求められます。必ずしも業務中に学習時間を取れるわけではないです。
経理の資格がキャリアに与える影響
経理資格は、キャリアに大きな影響を与える可能性があります。資格を持つことで、より高度な職務に就くチャンスが増え、結果として給与アップや昇進につながることがあります。また、資格は経理の専門知識だけでなく、問題解決能力や分析力などの重要なスキルの習得を促すため、キャリアの発展に大きく貢献します。
例えば「日商簿記2級」は経理関係では最もメジャーな資格ですが、資格保有が以下に当てはまる場合があります。
- 昇進の要件
- 転職の応募要件(経理)
経理資格の取得は、一朝一夕には行えない努力が必要ですが、その努力は確実に自身のキャリアを豊かにするものです。経理の世界で成功を収めたい方にとって、資格は重要なステップの一つと言えるでしょう。
おすすめ経理関連資格5選
ここまで、レベル別に経理資格を紹介してきました。ここでは、知名度や実用性を考慮した上で、僕のおすすめ経理資格5選を順番に解説していきます。
簿記3級 簿記2級 | FP3級 FP2級 | Mos(Excel) | ビジネス会計検定2級 | 消費税能力検定2級 | |
---|---|---|---|---|---|
取得難易度 | (1.5 / 5.0) (3 / 5.0) | (1.5 / 5.0) (3 / 5.0) | (2 / 5.0) | (2.5 / 5.0) | (3 / 5.0) |
経理実務直結度 | 10 | 8 | 10 | 7 | 7 |
活用できる業務 | 全般 | 全般 (特に資金/申告) | 全般 | 全般 (特に経営管理) | 全般 (特に財務・税務申告) |
学習期間 | 3級:3ヶ月 2級:6ヶ月 | 3級:3ヶ月 2級:6ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 6ヶ月 |
受験料 | 3級:2,850円 2級:4,720円 | 3級:8,000円 2級:11,700円 | 10,780円 (一般) | 7,480円 | 2,700円 |
合格率 | 3級:約40% 2級:約30% | 3級:約60% 2級:約30% | 約80%(推定) | 2級:約50% | 2級:約85% |
備考 | 年3回(6、11、2月) +随時試験 | 年3回(5、9、1月) FP協会/きんざい試験で学科は共通 | 全国一斉(月1~2回) +随時試験 | 試験:年2回 (10、3月) | 試験:年3回 (5、10、2月) |
参照(公式HP) | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
(※FP試験は、金融財政事情研究会(きんざい)の試験内容を記載)
簿記検定 (日商簿記検定)
難易度(10段階):3~6(簿記3級~2級)
経理実務直結度 :9
学習期間 :2~3ヶ月(3級)、3~6ヶ月(2級)
簿記検定は、資格自体の知名度の高さもあり、経理未経験者~経理初心者が最初に取り組むのにおすすめの資格です。理由は以下の通りです。
- 経理の共通言語といえる簿記の用語理解が進む
- 多くの経理担当が関わる、財務諸表作成の流れを理解できる
簿記検定で有名なのは日商簿記検定です。特に日商簿記3級は、初心者向けの試験範囲となっています。簿記特有の用語やルールに慣れるまで少し時間はかかりますが、約3ヶ月程度の学習で合格可能な試験範囲です。
簿記は経理業務全般に活用できる資格ですが、特に財務分野の業務には前提知識として必須の資格と言えます。また、経理の転職求人の中には、簿記2級保有を必須としている企業もあるほど、資格自体が経理への適性の指標として評価されている資格です。この数年で、簿記3級・2級ともネット試験が行われるようになったことから、受験時期もある程度自由に選べるようになり、格段に受験しやすくなりました。
簿記3級~簿記1級は、試験科目や難易度に大きく違いがあり、1級は各科目で一定以上の点数が必要になります。2018年以降、簿記2級の試験範囲に連結会計が加わり試験範囲が広がったことから、合格率は回によってばらつきが大きくなってきました。
- 簿記3級(勉強期間:3ヶ月 合格率:約50%)商業簿記
- 簿記2級(勉強期間:6ヶ月 合格率:約30%)商業簿記および工業簿記
経理未経験者や初心者は、まず簿記3級、できれば簿記2級まで取得することで、基本的な簿記の知識を身につけ、経理としての活躍の幅を広げることができます。
例えば僕の働いているメーカーでは、「簿記2級」取得が管理職昇格の要件の一つです。
簿記の勉強方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
>>【口コミ有】スタディングで簿記2級に合格!初心者でも短期間で合格できる方法を解説
ファイナンシャルプラニング技能検定(FP)
難易度 :3~6 (3~2級)
経理実務直結度 :7
学習期間 :2~3ヶ月(3級)、3~6ヶ月(2級)
ファイナンシャルプラニング技能検定は、簿記の次に学習するのにおすすめの資格です。理由は以下の通りです。
- お金に関する幅広い知識を身に着けることで、担当できる経理業務の幅が広がる
- 簿記とのダブルライセンスで経理処理の理解が深まり、突発的な事態にもスムーズに対応できる
FP試験は、日本FP協会およびきんざい(金融財政事情研究会)主催の検定があり、どちらかを選んで申し込むこととなります。FP2級を受験するにはFP3級を合格する必要がありますが、どちらで受講してもFP2級で再度、どちらの団体で受験するか選びなおすこともできます。
FP試験の学習内容は、経理業務のうち、特に資金繰りや税務申告の業務を行う際にベースの知識となります。
FP試験の試験範囲は以下の6分野に分かれており、学科・実技試験に分かれています。それぞれ6割以上の得点で合格となります。
- ライフプランニングと資金計画
- リスク管理(保険等含む)
- 金融資産運用
- タックスプランニング
- 不動産
- 相続・事業承継
以上のように、FP試験の学習を通じて、年金・保険・投資・金利・税金 等、お金についての広い分野の知識を身に着けられ、そのことが経理業務での業務の幅を広げることにつながります。
試験学習は独学でも可能ですが、時間がない社会人は通信講座を受講し、スキマ時間で学習しながら効率的に合格するのがおすすめです。以下の別記事で、おすすめの学習教材や学習法等の詳細を解説しています。
※FP3級試験
>>【5千円以下】スタディングFP3級講座は最安でスキマ時間に受講できる(口コミ9選紹介)
※FP2級試験
>>【3万円以下】スタディングFP2級講座を活用してスキマ時間で合格する方法(口コミ7選紹介)!
>>【厳選】きんざい FP2級対策におすすめの問題集を徹底比較!
>>【FP2級合格者が紹介!】きんざいFP試験対策でおすすめテキストと使い方
MOS (Microsoft Office Specialist) (Excel)
難易度(10段階) :4
経理実務直結度 :10
学習期間 :2~3ヶ月
MOS(Excel)は、簿記と並んで経理未経験者~初心者に優先して取得をおすすめする資格です。
なぜなら、Excelは、あらゆる経理業務で活用する機会が多く、早々にスキルを磨く必要があるためです。また、Microsoft Officeの使い方を認定する公認資格であることから資格の知名度も高く、資格としての価値もあります。
経理業務全般に関わる資格ですが、特に経営管理系の、Excelでの資料作成や分析がメインとなる業務の効率化に活用できます。
Mosを取得することで、Excelの一般的な機能を使いこなせることが証明できるため、簿記と合わせれば経理としての就職や転職の際に有利になることがあります。また、Mos(Excel)試験の学習によって経理職には必須なExcelの操作について習熟できるため、業務の効率化にもつながります。
Mos試験は7割程度の点数を取ると合格と言われています。3ヶ月程度の学習で合格できますが、それによって得た知識はその後の業務で大きく活用できます。
また、ExcelについてはMos試験と合わせて、ショートカットキーの習得もおすすめします。Mos試験の学習によって得た知識をショートカットキーで効率的に運用できるからです。
経理では、システムからDLしたデータの加工・集計、社内報告資料の作成等、あらゆる業務でExcelを活用します。そのためExcelの作業スピードは業務スピードに直結します。
Mos試験対策のおすすめ教材については、Mos試験合格にはUdemyのエクセル兄さんExcel講座が最適!で解説しています。
その他のExcelの知識については、経理に必須!Excel効率アップの関数を紹介、および経理の時間短縮!Excelショートカットキー活用のコツを伝授を参照ください。
ビジネス会計検定
難易度(10段階):6 (2級)
経理実務直結度 :7
学習期間 :3~6ヶ月
ビジネス会計検定も、経理未経験者~経理初心者におすすめの資格です。
ビジネス会計検定は、会計の基礎的な知識と実務に必要なスキルを身につけるための資格であり、ビジネスの現場で実践的な会計スキルを身につけたい方に適しているからです。会計処理がメインの簿記検定の、試算表等の処理に苦手意識を持った方は、ビジネス会計検定で幅広く会計の学習を始めるという手もあります。
ビジネス会計検定は、全国の商工会議所を通じて受験することができます。試験内容は、会計基礎、簿記、財務諸表、財務分析などで構成されており、実務に必要な知識とスキルを幅広くカバーしています。
また、ビジネス会計検定は、ビジネスパーソンが抱える問題解決力を身につけることを目的としており、問題解決能力の高い人材を育成するための試験でもあります。
経理業務全般に役立つ資格ですが、試験範囲に財務分析も含む分、経理処理がメインの簿記検定よりも経営管理業務に向いている資格と言えます。ただし、経理部門へのアピールポイントとしては知名度が低いため、未経験から経理業務に転職する等の場合は、簿記を習得することをおすすめします。
このようにビジネス会計検定は、会計業務に必要な知識とスキルを身につけられる試験のため、会計知識を幅広く身に着けたい方におすすめの資格です。
簿記とは違う視点で、財務諸表を「読む」基礎知識が身に付きます。
ビジネス会計検定については、【どっちがおすすめ?】簿記2級とビジネス会計検定2級の選ぶポイントを現役経理部員が比較でも詳細解説しています。
税法能力検定(消費税・法人税)
難易度(10段階):6 (2級)
経理実務直結度 :7
学習期間 :3~6ヶ月
税法能力検定のうち、最初は消費税法能力検定をおすすめします。なぜなら、経理として仕訳を切るにも、消費税の知識は必須だからです。
消費税法能力検定は、消費税を扱う職種や業種に従事している人にとって非常に役立つ資格といえます。なぜなら、消費税に関する法律や制度を理解し、その適用に関する基本的な知識を身につけることができるためです。これは、会計処理を行う際はもちろん、申告業務を行う際にも必須の知識となります。
消費税法能力検定は、公益社団法人全国経理教育協会(全経)が実施している消費税に関する資格です。消費税はビジネスにとって非常に重要な税金であり、今年度から適用されるインボイス制度も含め、税制改正も頻繁に行われるため、消費税に関する正確な知識を持っていることが求められます。
消費税法能力検定は、個別論点の問題、および簡易的な書式で消費税の申告計算を行う問題が出題されます。試験に向けて学習を行うことで、消費税の基礎的な知識から最新の制度までを網羅的に学ぶことができます。
経理業務全般にかかわる知識ですが、特に財務会計での伝票処理業務、および税務申告業務での活用ができます。2023年10月から強制適用となるインボイス制度に対応するためにも、消費税の申告についての知識は不可欠です。
このように、消費税法能力検定は、消費税に関する基礎的な知識を身につけられる資格であり、消費税を扱う職種や業種に従事している人にとって役立つ資格と言えます。また、消費税は税率改定だけではなく、2023年度から始まるインボイス制度も含め、税制変更が頻繁に行われるため、消費税に関する知識を深めたい人にはおすすめの資格と言えます。
過去問をしっかり学習すれば、1級でも3ヶ月~半年程度で合格できる試験です。
いきなり1級受験も可能ですが、初心者向けの本と併用しましょう。
消費税法能力検定については、【合格者が解説!】消費税法能力検定1級の効率的勉強法を参照ください。
法人税法能力検定については、【1級合格者が解説】経理に役立つ法人税法1級勉強法を参照ください。
経理資格取得のための勉強方法とコツ
経理資格を取得するためには、効率的かつ効果的な勉強方法を見つけることが重要です。ここでは、独学、通学や通信講座の利用、勉強計画の立て方について解説します。
独学での勉強方法
独学で経理資格を目指す場合、まずは適切な教材選びが重要です。参考書や問題集を選ぶ際には、初心者にもわかりやすい内容かどうかを確認しましょう。また、実際の試験の過去問題を解くことで、試験の形式や問われる内容の傾向を理解することができます。自分で学習スケジュールを立て、定期的に復習を行うことも大切です。
通学、通信講座の活用
通学や通信講座を利用する場合、専門の講師から直接指導を受けることができるのが最大のメリットです。また、他の受講生と情報交換をすることで、モチベーションを保つことも可能です。通信講座は、自宅での学習が中心となりますが、時間や場所を選ばずに勉強できるため、忙しい人にも適しています。
勉強計画の立て方
効率的な勉強のためには、適切な勉強計画を立てることが不可欠です。計画を立てる際には、試験までの期間を考慮し、毎日または毎週どの程度勉強するかを決めましょう。また、勉強時間だけでなく、休憩時間も計画に含めることで、疲れを溜めずに効果的に学習を進めることができます。
経理資格の勉強は、継続が鍵です。自分に合った学習方法を見つけ、計画的に取り組むことで、資格取得への道を着実に進むことができるでしょう。
上位難関資格の概要
ここからは、働きながら取得するのはかなり難しく、少なくとも数年単位で時間を要する資格を参考に紹介します。合格する為には、資格学習を生活のメインに据える必要があるため、それなりの時間を投資できる環境の準備と心構えを持ったうえで学習を開始することをおすすめします。ただ、難関である分、合格後に高収入を目指せる独立の可能性があり、目的によっては挑戦する価値のある資格です。
税理士試験
難易度(10段階) :10
経理実務直結度 :8
学習期間 :3年~
税理士試験は、経理の専門家として高いスキルを求められる職業の一つであり、日本の税制や法律、経理などの幅広い知識が必要です。税理士資格を持っていることで、高い報酬や専門性の高い業務に従事することができます。
税理士という職種は、税金に関することはもちろん、企業の財務諸表の作成や監査、経営支援など、幅広い業務に対応する必要があります。税理士に必要な知識やスキルは非常に高く、税制や法律の改正にも常に対応しなければなりません。そのため、税理士試験は難易度が高く、合格率も低いのが特徴です。
税理士試験は、簿記・財務諸表論および税法3科目の計5科目を合格することで合格(官報合格)となります。
- 簿記
- 財務諸表論
- 法人税または所得税(どちらかは必須)←ボリューム大
- 消費税または酒税(どちらか1科目のみ選択可)
- 相続税・国税徴収法・固定資産税・住民税・事業税のいずれか
1度合格した科目の権利は生涯継続するため、例えば1年に1科目、というような戦略を取ることも可能です。また、特定の分野の大学院(修士課程)卒業による一部科目免除も存在します。
税理士は、高いスキルを持つ専門家として高い報酬を得ることができるため、多くの人々から尊敬される職業ともいえます。また、税理士法に基づいた許認可制度があるため、税理士が提供するサービスには一定の信頼性が求められます。
税理士は、個人事業主や中小企業の経営者などからも需要が高く、個人や企業の財務や税務相談を受けたり、経営支援を行うこともあります。
税理士は、税制や法律、経理など幅広い知識が求められる専門職であり、高いスキルを持つことが求められます。
税理士試験受験におすすめ教材と活用方法については、【スキマ時間で合格!】スタディング活用法:税理士試験簿財科目合格のコツで解説しています。
公認会計士試験
難易度(10段階) :10
経理実務直結度 :9
学習期間 :3年~
公認会計士は、会計法や税法、会計監査の知識が求められる国家資格の一つです。公認会計士は、企業の財務諸表の監査や税務相談など、高度な専門知識が必要な業務に従事することができます。経理職にとどまらず、さらに高度な職種に就くことも可能です。こちらの資格も、働きながら学習するのにはかなりの覚悟が必要です。理由は以下の通りです。
- 学生や、受験に専念している人がかなりの割合いるため、その人たちを上回る必要がある(相対評価)
- 一定期間内に全科目合格しないと、再度受験する必要が出てくる(論文式試験)
難易度が高い分、合格後のキャリアの選択肢は多いです。
公認会計士は、企業の財務諸表の監査や税務相談など、高度な専門知識が必要な業務に従事することができるため、高い専門性が求められます。また、公認会計士は、経理職にとどまらず、経営幹部として企業の方向性を決定する場にも参加できます。公認会計士が企業の経営幹部に就く例も多く、資格取得後のキャリアアップの可能性も広がります。
会計士試験についての詳細は、公認会計士と税理士、あなたに合うのは?違いを解説!を参照ください。
米国公認会計士試験(USCPA)
難易度(10段階):8
実務直結度 :5(国内企業の場合)
学習期間 :1年~
米国公認会計士(USCPA)は、米国での公認会計士の資格であり、国際的に高い信頼性がある資格のひとつです。ただ、国内企業で勤める方の場合、知識の習得をメイン目的に据えることをおすすめします。
理由は以下の通りです。
- 受験資格証明および受験料が高額(日本で受験する場合、受験料は約7万円/科目×4科目)
- 資格取得の難易度の割に評価されない企業が多い(特に伝統的な日本企業)
- 国内企業では、知識を活用できる場面が限られる(英語+米国会計基準の知識が必要となる企業は別)
USCPAは、総合的な会計知識、監査、税務、ビジネス環境に関する能力を測定するためのものであり、合格難易度が高いことで知られています。以下の4科目を1年半以内に合格することが求められます(2023年度より一部変更)。
また、受験資格として会計系の科目の大学の単位を一定数履修していることが求められるため、経理や会計を学習してこなかった方は受験資格を満たすために追加の時間と費用がかかります。
- 財務会計(FAR(FinancialAccounting&Reporting))
- 企業経営環境・経営概念(BEC(BusinessEnvironment&Concepts))
- 諸法規(REG(Regulation))
- 監査および諸手続き(AUD(Auditing&Attestation))
米国公認会計士試験は、アメリカ公認会計士協会(AICPA)が実施しており、その難易度は比較的高く、合格率は約50%以下とされています。ただ、英語の試験という点を差し引くと、日本の会計士試験と比べると試験自体の難易度は低いです。
日本でも米国公認会計士を保有している人材は、外資系企業や大手コンサルティングファームなどで活躍しています。また、米国での公認会計士試験を受験し合格した日本人も少なくありません。彼らは、日米間のビジネスや金融取引において、その高い知識や能力を活かしています。
受験週ごとに受験のための単位要件が異なるため、よく調べてから出願しましょう。
業界特化型の経理資格
経理の知識は万能ですが、特定の業界では特化した知識が求められることがあります。ここでは、特定の業界に特化した経理資格について紹介します。
銀行業務検定試験
銀行業務検定試験は、銀行業界に特化した知識を証明する資格です。金融市場や銀行法規、貸し出しや資産管理など、銀行特有の業務に関する深い知識が求められます。この資格は、銀行やその他の金融機関での経理業務において非常に有用です。
建築業経理事務士検定/建築業経理士検定
建築業経理事務士検定や建築業経理士検定は、建築業界に特化した経理資格です。工事の進捗に応じた収入や支出の管理、工事原価の計算など、建築業特有の会計処理を理解するための資格です。
社会福祉会計簿記検定試験
社会福祉会計簿記検定試験は、社会福祉法人などの特殊な会計基準を理解するための資格です。社会福祉法人の会計は、一般企業とは異なる特殊なルールがあり、この資格はそれらを理解するために役立ちます。
農業簿記検定
農業簿記検定は、農業分野の特有の経理処理を理解するための資格です。農作物の生産コストや市場価格の変動など、農業特有の経済活動を会計上で適切に扱う知識が求められます。
これらの資格は、特定の業界で経理の専門家として活躍するために非常に重要です。各業界特有の経理処理を理解し、その業界における経理の専門家として貢献することができます。
経理資格取得のための勉強方法とコツ
経理資格を取得するためには、効率的かつ効果的な勉強方法を見つけることが重要です。ここでは、独学、通学や通信講座の利用、勉強計画の立て方について解説します。
独学での勉強方法
独学で経理資格を目指す場合、まずは適切な教材選びが重要です。参考書や問題集を選ぶ際には、初心者にもわかりやすい内容かどうかを確認しましょう。また、実際の試験の過去問題を解くことで、試験の形式や問われる内容の傾向を理解することができます。自分で学習スケジュールを立て、定期的に復習を行うことも大切です。
通学、通信講座の活用
通学や通信講座を利用する場合、専門の講師から直接指導を受けることができるのが最大のメリットです。また、他の受講生と情報交換をすることで、モチベーションを保つことも可能です。通信講座は、自宅での学習が中心となりますが、時間や場所を選ばずに勉強できるため、忙しい人にも適しています。
勉強計画の立て方
効率的な勉強のためには、適切な勉強計画を立てることが不可欠です。計画を立てる際には、試験までの期間を考慮し、毎日または毎週どの程度勉強するかを決めましょう。また、勉強時間だけでなく、休憩時間も計画に含めることで、疲れを溜めずに効果的に学習を進めることができます。
経理資格の勉強は、継続が鍵です。自分に合った学習方法を見つけ、計画的に取り組むことで、資格取得への道を着実に進むことができるでしょう。
経理以外にも有用なスキル
経理業務においては、専門知識だけでなく、他のスキルも非常に重要です。特にコミュニケーション能力と分析力は、経理の効率と効果を大きく向上させます。
コミュニケーション能力が経理にもたらす効果
経理は会社の他部門や外部の人々と頻繁にやり取りをするため、コミュニケーション能力が非常に重要です。例えば、予算の説明や財務状況の報告など、経理の情報をわかりやすく伝える必要があります。また、チーム内での円滑なコミュニケーションは、ミスの防止や業務効率の向上にもつながります。
分析力向上で経理業務を効率化
経理業務には、数値データの分析が欠かせません。分析力があると、データから有益な情報を引き出し、より良い財務判断を下すことができます。例えば、売上の傾向を分析することで、将来の予算計画をより正確に立てることが可能になります。また、不要な経費を見つけ出して削減するなど、コスト管理においても分析力は重要です。
経理業務においては、単に数字を扱うだけでなく、それらを通じて会社の全体的な健康状態を理解し、伝えることが求められます。そのため、コミュニケーション能力と分析力の向上は、経理職にとって非常に重要なスキルです。
経理資格取得による経理キャリアの道
経理資格は、経理職におけるキャリアの発展に大きく貢献します。資格取得によるキャリアアップの可能性、転職市場での優位性、そして職場での活用例について見ていきましょう。
資格取得がもたらすキャリアアップの可能性
経理資格を取得することは、専門知識の深化だけでなく、キャリアアップの大きなステップになります。例えば、資格を持つことで、高度な経理業務や管理職への昇進の可能性が高まります。さらに、資格は経理の専門性を証明するため、仕事の質の向上や新しい責任あるプロジェクトへの参加機会が増えることが期待できます。
資格があると転職市場で有利になる?
経理資格は転職市場でも大きなアドバンテージとなります。資格を持っていることで、採用担当者に対して専門性や熱意をアピールできます。また、資格は即戦力としての能力を示すため、より良い条件での転職が可能になることが多いです。特に経理専門の資格は、その分野での専門知識を求める企業にとって魅力的な要素です。
資格を活かした職場での活用例
経理資格を活かす具体的な例としては、予算策定、財務分析、税務処理などが挙げられます。これらの業務は、専門的な知識が求められるため、資格取得者はより複雑で高度な業務を担当することが可能です。また、資格取得により習得した最新の会計基準や法規を、日々の業務に活かすことができ、経営陣への報告や戦略策定においても重要な役割を果たします。
経理資格の取得は、単なる試験合格以上の意味を持ちます。キャリアの発展、転職市場での競争力の向上、そして日々の業務における専門性の発揮など、経理職における多面的な成長に貢献することでしょう。
経理資格を取得するためのサポート制度
経理資格の取得は多くの努力と時間が必要ですが、幸いなことに、資格取得をサポートするための様々な制度が存在します。教育訓練給付制度、助成金や補助金の活用、企業のバックアップ体制について説明します。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、資格取得のための学習に関連する費用の一部を給付金として受け取ることができる制度です。この制度は、資格取得を目指す個人にとって大きな助けとなります。例えば、特定の講座の受講料の一部が給付されることで、費用の負担を軽減することができます。
助成金や補助金の活用
助成金や補助金は、資格取得にかかる費用をサポートするための公的な資金です。これらの制度を活用することで、資格取得に必要な教材の購入や講座の受講が容易になります。地方自治体や職業訓練施設などが提供する制度もあるため、自分が利用できる制度を調べてみることが重要です。
企業のバックアップ体制
多くの企業は、従業員のスキルアップを支援するために、資格取得に向けたバックアップ体制を提供しています。例えば、受講料の補助、学習時間の確保、内部研修の提供などがあります。自社でのキャリアアップを目指す場合、勤務先の支援制度を確認し、活用することが推奨されます。
経理資格取得は、個人のキャリアにとって大きな投資です。これらのサポート制度を活用することで、経済的な負担を軽減し、スムーズに資格取得への道を進むことができます。
よくある質問
Q: 経理資格を取得するためには、スクールに通う必要がありますか?
A: スクールに通うことで、効率的な勉強方法やアドバイスを得られるなどのメリットがありますが、必ずしも通う必要はありません。自己学習での取得も可能です。ただし、自己学習では勉強の計画を立てたり、自己管理する能力が必要となります。僕は、忙しい社会人は、スクールを利用して最短で効率的に合格するのをおすすめします。
Q:簿記検定は何級まであるのですか?
A:1級から3級まであります。
目安として、主な出題内容は以下のようになっています。ただ、2級は連結決算が出題されるようになってから難化傾向があります。
- 1級:大企業の経理処理
- 2級:中小企業の経理処理
- 3級:個人事業主の経理処理
Q:経理資格を持っていると給料が上がるのでしょうか?
A:企業によっては資格取得手当が出るところもあります。また、経理の管理職昇進のために簿記2級が条件、という企業もありますので、長期的にみると給与アップに寄与します。短期的には転職により、給与のアップを狙う際のアピール材料にもなります。
Q:経理資格を持っていない人でもビジネス会計検定は受けられる?
A:ビジネス会計検定に経理資格の要件はありませんので、問題なく受験できます。簿記検定や、消費税法/法人税法能力検定も同様です。
まとめ:経理資格の取得でキャリアアップを図ろう
この記事では、経理資格について紹介した上で、僕がお勧めする経理資格5つについて、それぞれのメリットや取得方法、勉強費用、勉強時間の目安を解説しました。以下、重要なポイントをまとめます。
- 簿記検定:3級は初心者におすすめ。経理未経験の転職では2級が必須条件の場合有。1級は難関資格。
- ファイナンシャルプラニング技能検定(FP):お金の知識全般の他、FP業界での就職にも役立つ
- MOS(Excel):経理職の必須スキルであるExcel知識を網羅的に学習するのに最適。
- ビジネス会計検定:会計の基礎知識を広く学びたい人におすすめ
以上から、経理資格の取得は、専門のスキルアップにつながることがわかります。働きながらの資格取得には時間の制限があることから、自己流の勉強ではなく、スクールや書籍の活用で、効率的に資格取得に取り組んでみてはいかがでしょうか。
おすすめの資格取得順については、【未経験~経理担当必見】実務に役立つ経理資格取得のおすすめ優先順位を現役経理が紹介します!で解説しています。
各資格の取得のためにおすすめする教材や学習方法については、別記事でまとめています。
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