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「経営管理」という仕事に、こんなイメージを持っていませんか。
– 経営層の直属の部隊
– 数値の取りまとめ役
– 会議の進行役
僕も担当する前は同じイメージでした。しかし、実際に経験した子会社の経営管理は思っていたよりずっと幅広く、実際に手を動かす経理業務も多い仕事でした。担当していた業務は次の6つです。
– 原価計算
– 収支管理
– 資金繰り
– 税務管理
– 会社法計算書類作成(決算開示)
– 連結パッケージ入力
この記事では、経理歴18年の僕が実際に担当した国内子会社の経営管理業務を紹介します。「経営管理」は会社によって内容が全く異なる仕事ですが、一例として読むことで、仕事のイメージが具体的になるはずです。す。
子会社の経営管理とは
僕が考える経営管理は、「企業が円滑に活動を運営するために必要な数値や活動の管理・運営を行う」仕事です。親会社の立場からは、子会社の事業活動を監督し、グループ全体の目標達成を支援するプロセスといえます。
ポイントは、定型的な業務ばかりではないことです。例えば収支管理で経費削減が必要なときも、ただ削るのではなく「生産に影響が出ない範囲で」抑制を依頼します。数値の管理と現場の活動のバランスを取るのが経営管理の本質です。
僕が担当した子会社の前提
業務内容は子会社の状況で大きく変わるため、先に前提を共有します。担当したのは次のようなメーカー(工場)でした。
- 部品メーカー
- 他社から工場を買い取って子会社化 → 経理部門なし
- 材料は親会社経由で購入
- 製造品の販売先はすべて親会社
経理部が存在しなかったため、経営管理でありながら財務会計の経理業務も兼ねることになり、冒頭の6業務を幅広く担当することになりました。
国内子会社の経営管理業務6つ
① 原価計算
製品を作るためのコストを計算する業務です。メーカーではコストが販売戦略・購買戦略・収益に直結するため、非常に重要です。材料費・労務費・経費を集計して原価を算出し、その数値をもとに各部門へ働きかけます。
- 製品分析(モデルミックス決定)
- コスト削減
- 価格戦略
原価計算の実務は別記事原価計算の仕事内容で詳しく解説しています。
② 収支管理
数値をまとめるのが仕事ではなく、数値を明確にすることで経営層に検討材料を提供し、各期の収支計画を達成することが目的です。月次PLの作成・分析、予算と実績の比較、採算性の評価を回します。
担当していた工場は親会社向けの売上のみで売上数量の決定権が本社側にあったため、実質的な管理項目は「予算管理」と「原価管理」の2つでした。期初の経費予算の策定と期中の予算管理は費目別に細かく行い、収益を計画どおりに着地させることを意識していました。
予算管理は「ひたすら費用を削ればいい」わけではありません。生産活動を最大限行いつつ費用を最小化するバランスが必要です。
メーカーの本業は「製品を作る」ことです。管理部門で数値ばかり触っていると忘れがちなので、常に意識しています。
③ 資金繰り
資金は企業の血液です。利益が出ていても資金が回らなければ「黒字倒産」になるため、月単位・場合によっては週単位で入出金を見込み、想定どおりの残高を維持します。
特に金額規模が大きい次の3つは、入金・支払サイトを正確に理解して管理する必要があります。
- 売上 → 売掛金の入金時期(例: 月末締め90日後入金)
- 費用 → 支払時期(例: 月末締めの10日払い)
- 税金 → 納付時期(例: 法人税は事業年度終了の日の翌日から2月以内)
支払時のチェックは経理だけで抱えず、チェックリストを各部門に配布して申請前に事前確認してもらっています。主なチェックポイントは次のとおりです。
- 支払金額が請求書と一致しているか
- 課税区分があっているか(誤りの例: 税込額を税抜額として入力 等)
- 請求書・領収書に適格請求書発行事業者番号(Tから始まる13桁の番号)が明記されているか
- 社内承認が済んでいるか
- 請求書の期日切れとなっていないか
資金繰りは収支(売上・費用)や税務(税金)とも密接に関わります。インボイス制度開始後は、相手先が適格請求書発行事業者かどうかの確認も必要になりました。
④ 税務管理
各種の税金を管理・申告する業務です。目的は3つあります。
- 支払漏れ・過少申告等による追徴税額リスクの回避
- 適正額で申告するための適切な収支管理による経営改善
- 過大な税金を納めることの防止
企業で特に金額が大きいのは消費税と法人税です。日々の業務で意識するとともに、決算・申告時には正確な計算が求められます。法人税・消費税の概略を学ぶなら税法能力検定がおすすめです。申告書の流れと必要な知識を体系的に身につけられます。
⑤ 会社法計算書類作成(決算開示)
株主や債権者に対して会社の財政状態・経営成績を報告する業務です。作成する主な計算書類は、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・株主資本等変動計算書・個別注記表です(上場企業ではキャッシュフロー計算書も義務化されています)。
会計基準や実務指針を都度確認するのは当然として、注記の表現は明文化されていない部分が多く、判断に迷います。リースや退職給付など基準自体が複雑な項目は、会計基準・実務指針の該当部分と他社の開示事例を参照しながら会計士と相談することになります。
ただし会計士も複数の監査を同時に抱えており、回答がなかなか来ないことがあります。迷う論点は早めにピックアップして、時間に余裕をもって質問しておくことが重要です。
注記表は「参照」程度に思っていたら、かなり細かく記載のルールが決まっていて驚きました。
⑥ 連結パッケージ入力
親会社がグループ全体の財務状況を把握するため、子会社の財務情報を連結会計システムに入力する業務です。僕の会社では連結経営管理システムを使用していました。連結パッケージの目的は次のとおりです。
- グループ会社のお知らせ情報収集
- 連結財務諸表作成の基礎データ作成
- 内部取引の消去データ収集
特にグループ内企業向けの債権債務残高・売上仕入高は、間違えるとグループの連結決算に影響するため、注意して集計・入力していました。
連結グループ内でも各社で違う会計システムを使っている場合があり、差異が出てくるのでかなり神経を使いました。
なお、決算開示業務は会計基準の変更や税法の影響を正確に反映する必要があるため、改定の適用時期を都度確認しておく必要があります。
子会社の経営管理に役立つ資格
幅広い知識が要求される分、活かせる資格も多いです。実務との対応は次のとおりです。
| 資格 | 活きる業務 |
|---|---|
| 簿記(+原価計算) | 原価計算・収支管理・会社法計算書類・連結パッケージ |
| FP | 資金繰り・税務管理 |
| 税法能力検定 | 税務管理・計算書類 |
| MOS(Excel) | 経営管理業務全般(特に原価計算・収支管理) |
時間がない社会人は通信講座がおすすめです。迷ったらまずは簿記かFPから、通信講座で学習しましょう(スタディングで簿記2級に合格した方法 / スタディングFP2級講座の活用法)
さらに上を目指すなら、日商簿記1級(高度な会計処理・原価計算)やビジネス会計検定(難易度と勉強法はこちら)が、財務諸表の作成・分析の土台を厚くしてくれます。取得順の全体像は経理資格の優先順位を参照してください。
一歩進んだExcelスキルには書籍もおすすめ
経営層の意思決定のために数値をまとめる際、MOSから一歩進んだ実践スキルとして『エクセルで学ぶビジネスシミュレーション超基本』(熊野整)がおすすめです。外資系投資銀行出身の著者が、売上や利益の感応度分析・相関分析など実践的なExcel活用を解説しています。僕は、バリュードライバの変動に対応したExcelの作成方法がとても有益だと感じました。同著者はUdemyでも講座を開講しており、操作を見ながら学べて作業用Excelファイルももらえるため、実務に落とし込みやすいです。
よくある質問(FAQ)
Q. 経営管理と経理(財務会計)の違いは何ですか?
財務会計が外部報告用の決算書を「正確に作る」仕事なのに対し、経営管理は社内の意思決定のために数値を「集計・分析して提供する」仕事です。ただし僕のケースのように、子会社に経理部がなければ両方を兼ねることもあります。
Q. 経営管理はどの会社でも同じ仕事内容ですか?
全く異なります。担当する子会社の状況(経理部の有無、商流、親会社との関係)で業務範囲が大きく変わるのが、この仕事の特徴です。この記事の6業務は「経理部のない製造子会社」の一例と捉えてください。
Q. 未経験から目指すなら何から勉強すべきですか?
まず簿記かFPです。簿記は原価計算・計算書類・連結の土台に、FPは資金繰り・税務の土台になります。あわせてExcelスキル(MOS)があると、初日から戦力になれます。
まとめ: 経営管理は会社全体を見渡し、運営をサポートする仕事
- 子会社の経営管理は、原価計算から連結パッケージ入力まで多岐にわたる(会社の運営をスムーズにするための業務すべて)
- 業務内容は会社によって全く異なる。経理部のない子会社なら財務会計も兼ねる
- 役立つ資格は簿記・FP・税法能力検定・MOS(Excel)。迷ったら簿記かFPから
- 数値の管理だけでなく、「生産に影響が出ない範囲で」のような現場とのバランス感覚が求められる
経営管理は、単なる数字の管理を超えて会社全体の運営を支える、視野の広がる仕事です。広く知識を蓄えながら、機会があればぜひ挑戦してみてください。