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経理は専門職です。法令や会計基準の学習を続けてスキルアップを図る必要があり、学習範囲が明確になる資格取得は多くの経理パーソンが取り組む王道です。一方で、数多くある資格のうちどれから取るべきか迷い、自分の業務に関係ない資格で時間を浪費してしまうケースも少なくありません。
結論からお伝えすると、経理実務に役立てるために優先取得すべき資格は次の4つです。
- 日商簿記2級
- MOS(Excel)
- 消費税法能力検定
- FP3級
ただし、最適な取得順は担当業務によって変わります。この記事では、経理歴18年・簿記1級保有の現役経理の僕が、未経験者〜担当別のおすすめ取得順を解説します。
まず結論: 担当業務別の取得順

簿記3級とExcelスキルは、どの業務担当になっても必須です。まだ担当が決まっていない未経験の方は、次章「経理未経験・初心者は簿記優先」の取得順から始めてください。ここから、担当別に「なぜこの順番か」を解説します。
土台は日商簿記3級とMOS(Excel)の2つで、ここはどの担当でも共通です(経営管理・資金管理は、簿記3級の代わりにビジネス会計検定2級から入っても構いません)。土台を終えたあとの順番は担当ごとに変わります。
| 担当業務 | 土台のあとの取得順 | 考え方 |
|---|---|---|
| 財務会計 | 簿記2級 → 消費税法能力検定2級 → 法人税法能力検定2級 | 簿記×消費税 |
| 税務 | FP3級 → 消費税法能力検定2級 → 法人税法能力検定2級 | FPで基礎を作ってから税法へ |
| 経営管理 | FP3級 → 簿記2級 → FP2級 | Excel×管理会計 |
| 資金管理 | FP3級 → FP2級 → 税法能力検定 | FP×税法 |
会社の規模が大きい場合は、FP2級より各税法を先に学ぶほうがよいこともあります。
経理未経験・初心者は簿記優先
経理の仕事は、会社の財政状態や経営成績を記録・計算・整理することです。簿記はこれらの情報を正確に記録するための「言語」であり、簿記の知識がなければ経理の書類を理解することも業務を進めることも難しくなります。まさに経理の基礎は簿記です。
簿記資格が評価される理由は明確です。
- 経理職の募集要項に多く記載されている(実務への適応力を示す指標)
- 未経験者にとって、意欲と基礎知識を客観的に証明できる強力な武器になる
未経験から始める場合の取得順は次のとおりです。

初心者向けの補足
- 配属先で原価計算・原価管理の知識が不要と判明した時点で、簿記2級の優先順位を下げてもOKです。簿記2級は2018年に連結会計が試験範囲に追加されてから商業簿記の難易度が上がっており、取得に時間を要するためです
- 税法は、会計処理で最も頻繁に関わる消費税を優先します。仕訳を1件起票するにも、消費税区分を判定できる知識が不可欠だからです
- 未経験から経理への転職希望の方は、簿記2級を確実に取っておきたいです。簿記2級取得済みを前提とする経理求人がそれなりに多く、選択肢が大きく広がります。難易度は上がっていますが、学習を継続すれば合格できる試験です(スタディングで簿記2級に合格した方法)
財務会計担当は簿記+税法の知識習得が優先
財務会計は、会社の「成績表」である財務諸表(貸借対照表・損益計算書など)を作成し、外部に公表する業務です。株主や金融機関に開示されるため、正確性と信頼性が極めて重要です。
財務会計業務は、各帳票ごとに1円単位で整合を取る必要があるため、計算と財務諸表の流れを身につけることも含めて、高いレベルでの簿記知識が必須です。主計業務なら簿記2級程度は必須、連結会計担当ならさらに簿記1級も取得したいところです。
税法の知識も欠かせません。財務諸表は法人税などの税金計算の基礎となり、会計上の利益と税務上の利益の違い(税効果会計など)を理解していなければ適切な財務諸表を作成できないからです。財務会計では、簿記と消費税はセットといえるぐらい重要です。
また、財務会計担当は会計基準・税法の改定への継続的なキャッチアップが不可欠です。影響の大きかった近年の例を挙げます。
- 改定後の収益認識基準の適用(2021/4〜)
- 消費税インボイス制度の導入(2023/10〜)
必要に応じて簿記1級や消費税法能力検定の2級・1級を取得しながら、最新制度の理解を進めましょう。
税務担当は税法優先
税務担当は、法人税・消費税・固定資産税など多岐にわたる税金を正確に計算し、申告する仕事です。企業の税務申告で金額影響の大きい税金は、法人税・消費税・固定資産税の3つ。税によって会計処理・申告方法・納付時期がすべて異なるため、全体を理解するには時間がかかります。
そこでおすすめなのが、各税法を個別に学習する前にFP試験の学習を先に行うことです。FP試験の学習を通じて所得税・消費税・固定資産税の基礎を短時間で学べるため、その後の税法学習がスムーズになります。
税法は、ルールや考え方を知らないと、いくら自分の頭で考えても正しい答えは出てきません。最初に基礎知識を身につけましょう。
そのうえで、実務に直結する消費税法能力検定・法人税法能力検定で月次処理〜申告までの流れを早い段階で理解すると、業務理解が一気に進みます(検定の全体像は税法能力検定とは?を参照)。担当する税が決まっている場合は、FPの代わりに各税法能力検定の1級を取る選択肢もあります。最終的に目指すなら税理士(科目合格でも専門性の証明になります)です。
経営管理担当は知識の幅とExcel優先
経営管理の中心は管理会計です。予算作成・実績分析・原価計算・事業計画の策定など、マネジメント層の要望に沿った情報を提供するのがメイン業務になります。
注意すべきは、経営管理は営業のように数値を作り出す部門ではなく、数値を正確に集計・分析する部門だということ。データは営業部門などから収集するため、各部門とのやり取りの時間を考えると、経理部内での作業時間は短くなります。僕が働いている経理部門では、次のようなことが頻繁に起きます。
- 会議開始30分前に営業部門から売上数値の変更連絡
- 会議開始10分前に、数値の修正連絡
- 会議開始5分前に、各資料の数値の整合が取れていないことに気がつく
しかも、経理部門が取りまとめた数値は「経理が出した数値」として責任を負います。誤りが許されない場面が多いので、早くて正確なExcelスキルは必須です。経営管理担当に必要なのは、整理・計算・説明すべてにおいての瞬発力です。
管理会計の体系的な知識には日商簿記1級の工業簿記・原価計算、実践的な分析力の証明にはビジネス会計検定が役立ちます。FP試験もお金の幅広い基礎として、マネジメント層への説明力を支えます。
報告資料の作成が多い場合はさらに磨きましょう。経理の人はExcelは得意でも、PowerPointやWordが苦手な場合が多いため、部内で重宝されます。
- 報告資料作成が中心 → MOS(PowerPoint)
- 数値の集計や分析が中心 → MOS(Excel) Expert、RPA(例: MicrosoftのPower Automate)
資金管理担当はお金の知識全般と税法優先
資金管理は、年間の資金計画→月々の資金見込→日々の資金繰りと、企業の資金状況の管理・運用を行う仕事です。利益が出ていても資金が回らなければ会社は倒れるため、「縁の下の力持ち」として先を見通す力が求められます。
特に金額影響の大きい税金や社会保険等はタイミングと金額規模の把握が必須のため、社会保険・年金・税法の学習が欠かせません。この分野を体系的にカバーできるのがFP資格です。FPは個人の資産運用のイメージが強いですが、税務・不動産・社会保険の知識が資金管理業務に直結します(FPと簿記どちらを取るべきかの判断基準)。
会社の規模が大きい場合は、FP2級より先に各税法を学ぶ必要が出てくることもあります。その場合は④FP2級と⑤税法能力検定の順番を入れ替えるのも良い選択です。
よくある質問(FAQ)
Q. 資格なしで経理に転職できますか?
求人はゼロではありませんが、簿記2級取得済みを前提とする求人がそれなりに多いのが実情です。転職の選択肢を広げるなら簿記2級までの取得をおすすめします。
Q. 1つだけ選ぶなら、どの資格ですか?
日商簿記です。どの担当業務でも基礎になる「経理の言語」であり、評価もされやすいためです。まず3級、可能なら2級まで。
Q. 簿記とビジネス会計検定、どちらを先に取るべきですか?
財務諸表を「作る」業務なら簿記、「読んで分析する」業務(経営管理)ならビジネス会計検定が先です。詳しくは簿記2級とビジネス会計検定2級の比較で解説しています。
Q. 独学と専門学校、どちらがいいですか?
まだ知識のない分野に挑むなら専門学校(通信講座)の利用がおすすめです。働きながらの学習は時間が限られているため、教材選びに悩む時間を演習に回せる専門学校のほうが効率的です。
まとめ: 担当業務に合わせた取得順で、効率的にスキルアップ
- どの担当でも土台は簿記3級+MOS(Excel)
- 未経験・転職希望者は簿記2級まで確実に
- 財務会計=簿記×消費税、税務=FPで基礎→税法能力検定、経営管理=Excel×管理会計、資金管理=FP×税法
- 闇雲に取らず、自分の業務との接点から優先順位を決めるのが時間を無駄にしないコツ
資格取得は、経理としてのキャリアを着実に押し上げてくれます。冒頭の取得ルート図を参考に、今の(またはこれからの)担当業務に合った1つ目の資格から始めましょう。
なお、この記事で扱ったのは「何をどの順で取るか」です。取った資格がいつ効くのかは、取る時点では選べません。僕自身の18年ぶんの取得歴を並べた資格は、自信がなかったから取ったで、効いた資格と効かなかった資格を実名で分けています。
あわせて読みたい: 経理に必要なスキル / 原価計算の仕事内容 / 国内子会社の経営管理の業務内容
資格の順番を決める前に、実際にどう効いたのかを読んでおくと納得しやすいと思います。経理の現場で簿記がいちばん活きた場面をnoteに書きました。