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「AIが進化すれば経理の仕事はなくなる」という話をよく聞きます。この記事では、実際に原価計算のシステム化プロジェクトに1年3か月関わった経験から、この問いに答えます。
僕は経理歴18年で、原価計算を10年担当し、そのうち1年3か月はシステム導入側のプロジェクトメンバーでした。結論を先に言うと、システム化で消えたのは入力作業だけで、代わりに確認と原因追及という仕事が増えました。
この記事でわかること
- システム化のプロジェクトで実際に何が起き、何が変わらなかったか
- AIやシステムで「消える業務」と「残る業務」の具体的な境目
- 将来性を高めるためにできること
原価計算をシステム化しても、仕事は減らなかった

この図は、出典の明記とリンク設置を条件に転載いただけます(加工・改変はご遠慮ください)。
出典:こつこつ経理の資格取得ナビ「経理の将来性|原価計算をシステム化しても仕事が減らなかった話から考える」
システム化と聞くと、新しい画面が用意されてすぐ楽になるイメージを持たれがちですが、実際に時間を取られたのは導入前の準備でした。
まず着手したのは、既存データの洗い直しです。対象を機種ごとにリストにして、構成表と実際の登録内容を1つずつ突き合わせました。この途中で、システムに登録されていない品目コードが次々に見つかり、そのたびに追加登録を依頼する作業が続きました。すべてを完璧に洗い直そうとすると終わりが見えないため、計画対象の80%以上をカバーできれば良しとする線引きを最初に決めたことが、プロジェクトが前に進むかどうかの分かれ目になりました。
準備段階でもう一つ手こずったのが、単位と桁のすり合わせです。基本の数量単位が細かすぎると1個あたりの評価額が0円として計算されてしまったり、ミリグラムとグラムのように単位を揃えないまま計算すると結果が1,000倍ずれたりします。工数の小数点以下の桁数も、システムによって3桁までしか扱えないものと5桁まで扱えるものが混在していました。単位や桁のズレは会計の理屈ではなく「システムに入るか、入らないか」で仕様が決まってしまう場面が実際にあります。
新しい自動計算の仕組みを本番で使う前には検証が必須で、自動計算の結果とそれまでの予定原価を1品目ずつ突き合わせ、誤差1%程度に収まっていることを合格ラインにしていました。突き合わせの表にはOK・NG・ERRの3つの結果が並び、検証作業の本体は、このNGとERRを1件ずつ潰していく地道な作業でした。
プロジェクトの規模は、月に約400機種を3人で確認する体制で、経理・財務・IT・システム推進部の合同で月2回の定例会が1年3か月以上続きました。本番導入が終わってからも、翌月以降ずっと課題を検討する会議が続いています。導入によってできあがった成果物は、実はシステムそのものではなく、積上エラー・単価が登録されていない品目・構成表の誤り・賃率や間接費率の値を確認するという、月次で回す手順のほうでした。
なくなるのは「入力」、なくならないのは「疑ってかかる目」

この図は、出典の明記とリンク設置を条件に転載いただけます(加工・改変はご遠慮ください)。
出典:こつこつ経理の資格取得ナビ「経理の将来性|原価計算をシステム化しても仕事が減らなかった話から考える」
このプロジェクトの経験から言えるのは、AIやシステムが得意なのは「決まったルールに従って処理する」ことで、消えていくのはその部分だけということです。
一方で、消えなかったのは次のような仕事です。
- システムが出した数字を、いったん疑ってかかる確認作業
- ズレが起きたときに、原因を1件ずつ潰していく原因追及
- 単位・桁・データの整合性など、システムが自動では判断できない前提条件の整備
大企業の経理システムは、1つのシステムに業務がすべて収まっていることはまずありません。僕が担当した拠点でも、販売のポータル・物流システム・購買システム・会計のSAP・帳票を出す情報提供基盤がそれぞれ別々に存在し、データ連携でつながっている構造でした。連携の切れ目、つまり「今、自分が見ているのはいつのデータなのか」を常に気にする役目は、システムではなく人が担っています。
在庫の評価方法も、品番の種類によって加重平均と最終購入単価が混在しており、同じアイテムでも単価がぶれれば評価は洗い替えられ、前月との差が生まれます。こうした「一律のルールでは割り切れない部分」を判断するのが、システム化が進んでも残り続ける仕事だと感じています。
将来性を高めるためにできること
システム化のプロジェクトを経験して思うのは、経理に必要なのは「AIに仕事を奪われないためのスキル」というより、システムが出した数字を検証できるだけの会計知識と、Excelで数字を扱う力です。
学習の順番としては、次の流れをおすすめしています。
- 簿記の基礎(2級まで): 仕訳・決算の仕組みを理解していないと、システムが何を計算しているのか判断できません
- Excel・MOSの学習: システムからのデータを検証・加工する土台になります
- 実務での検証経験: システムの結果を疑ってかかる感覚は、担当業務を通じてしか身につきません
簿記の学習は、スキマ時間で進められる通信講座を使うと継続しやすいです。僕が簿記2級を取ったのは学生時代で、専門学校の講義と問題集で勉強しました。いまから働きながら学ぶなら、通勤時間に講義を見られるスタディングの通信講座を選びます。
働きながら簿記を学ぶスタディング公式(簿記)
システム化・自動化の前提知識としてExcelを固めたい場合は、経理のExcel関数7選も参考にしてください。原価計算の日々の業務内容は、原価計算の仕事内容とは?で解説しています。
よくある質問
Q. システム化が進むと、経理の仕事はいずれ本当になくなりますか?
A. 僕の経験では、そうはなりませんでした。自動計算に置き換わったのは入力作業で、システムが出した数字を確認し、ズレの原因を追いかける仕事は残ります。むしろ、数字を疑ってかかる目を持った担当者が、以前より必要になったという感覚です。
Q. これから経理を目指す場合、何を優先して学ぶべきですか?
A. まず簿記の基礎です。システムが何を計算しているかを理解していないと、検証も原因追及もできません。そのうえでExcelでの数字の扱い方を身につけると、システム化が進んだ現場でも対応しやすくなります。
Q. システム化プロジェクトにはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 僕が関わったプロジェクトでは、経理・財務・IT・システム推進部が合同で月2回の定例会を1年3か月以上続けました。対象範囲や既存データの整い方によって期間は変わりますが、準備段階のデータクレンジングに多くの時間がかかる点は共通すると思います。
まとめ
- 原価計算をシステム化しても、経理の仕事は減らなかった。減ったのは入力の手間で、増えたのは確認と原因追及
- AIやシステムが得意なのは決まったルールに従う処理で、消えるのはその部分だけ
- 単位・桁・データの整合性など、一律のルールでは割り切れない判断は人に残り続ける
- 将来性を高める学習の順番は、簿記の基礎→Excel→実務での検証経験
原価計算の業務内容や、他の実務エピソードは原価計算の仕事内容とは?で紹介しています。