第120回 税法能力検定の出題傾向と難易度|法人税・消費税1級を現役経理が分析

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第120回 税法能力検定の出題傾向と難易度|法人税・消費税1級を現役経理が分析

第120回(令和8年10月25日施行)の税法能力検定で、消費税法1級の合格率は5.05%でした。合格者は198人の受験者のうち10人です。前回の第119回は41.05%だったので、ほぼ8分の1に下がっています。法人税法1級も20.62%で、4税目の1級はどれも前回より下がりました。

問題を読んで見えてきたのは、1級は大問の配点が偏っていて、最後の総合問題を落とすと合格点に届かない作りだということです。僕は第120回を受験していません。法人税法1級と消費税法1級に合格した経理歴18年の立場で、4税目の問題を読んで分析しました。

この記事で分かることは次の3つです。

  • 第120回の合格率と、前回からの変化
  • 法人税1級と消費税1級の出題傾向(論点と配点)
  • 次回の受験に向けて、どこに力を入れるか

「傾向どおりに勉強して大丈夫か」と迷っている人も、傾向を知って絞ることは手抜きではありません。1級は範囲が広いので、点の取り方を先に決めたほうが続きます。

結論から言うと、まず第4問の総合問題に時間を回せる状態を作ることです。理由は、この記事の「難易度の見立て」に書きました。なお、問題文や数値、解答は載せていません。論点名と構成、配点だけを自分の言葉で書いています。用語は、1級を受ける人が分かる前提で書いています。

第120回の概要と合格率

第120回は、法人税法・所得税法・消費税法・相続税法の4税目が令和8年10月25日に施行されました。各級とも100点満点で、70点以上が合格です。制限時間は、問題用紙の注意書きによると1級が1時間30分、2級と3級が1時間でした。

主催の全国経理教育協会が公表した合格率は次のとおりです(確認日は2026年11月7日。()内は前回の第119回)。

税目 1級 2級 3級
法人税法20.62%(24.26%)56.39%(67.65%)83.49%(83.36%)
所得税法18.18%(21.43%)74.35%(45.56%)88.24%(75.46%)
消費税法5.05%(41.05%)50.00%(50.24%)81.14%(88.94%)
相続税法12.79%(21.43%)70.27%(66.23%)83.75%(81.61%)

1級の実受験者と合格者は、法人税法が160人中33人、所得税法が44人中8人、消費税法が198人中10人、相続税法が86人中11人でした。

目立つのは消費税法1級です。前回は229人が受けて94人が合格していましたが、今回は198人のうち10人でした。一方、所得税法2級は45.56%から74.35%に上がっています。この2回の比較では、級ごとの合格率がかなり動いています。

この数字だけで、問題が難しくなったと決めることはできません。受験者の顔ぶれや採点の厳しさも関わるからです。ここからは、問題の中身を見ていきます。

【法人税法1級】の出題傾向

法人税法1級は4問構成で、配点は第1問20点、第2問15点、第3問15点、第4問50点です。

第1問は用語や文章の穴埋め6問と、正しい(または誤っている)文章を選ぶ2問です。今回は固定資産の定義、公益法人等の収益事業開始の届出、確定申告に伴う納付、有価証券の期末評価が出ました。そのほか、実質所得者課税、益金の額の定義、資産の評価損益、隠蔽仮装行為に関する費用も問われています。

一部の設問は、条文の用語や言い回しで答えるよう指示されています。意味が合っていても、言い回しが違えば点にならない恐れがあります。

第2問は、減価償却費の税務調整です。建物の改修工事で修繕費と資本的支出を分ける問題、補助金を受けた機械の圧縮記帳と特別勘定の取崩し、車両の改定取得価額の判定、一括償却資産の除却など、5つの資産で論点が違う構成でした。同じ「減価償却」の中で、論点が細かく切り替わります。

第3問は、別表五(一)の記載と寄附金の損金不算入額です。利益準備金の資本組入れと、完全支配関係のある子会社への寄附、神社への寄附が組み合わさっていました。

第4問(50点)は、別表四で所得金額を出し、別表一で納付すべき法人税額まで計算する総合問題です。資料には、次のような論点が1問にまとめて入っていました。

  • 納税充当金と、納付した税金の処理
  • 罰金・延滞金など、損金にならない支出の判定
  • 保有割合に応じた受取配当等の益金不算入と、支払利子の扱い
  • 交際費等の範囲
  • 一括評価金銭債権の貸倒引当金
  • 外国税額控除、適格現物分配

実務でいつも触れる論点(納税充当金、交際費、貸倒引当金)と、試験のための論点(保有割合ごとの配当、適格現物分配)が並んでいます。問題文には、地方法人税と防衛特別法人税は考慮しなくてよいという指示もありました。改正後の法令を前提にした出題だと分かります。

【消費税法1級】の出題傾向

消費税法1級も4問構成で、配点は法人税と同じ20点、15点、15点、50点です。

第1問は、用語の穴埋め6問と、選択2問です。次の論点が出ました。

  • 国際輸送の扱い
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、小規模事業者の免除が使えなくなる場合(特定期間の課税売上高)
  • 適格請求書の交付と、発行事業者の登録
  • 免税事業者になるときの棚卸資産の扱い
  • 電気通信利用役務の国内判定
  • 借地権に関わる取引の扱い

インボイス制度に関わる設問が、穴埋めと選択の両方にありました。

第2問は、調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整です。一括比例配分方式を使っている会社の備品について、転用した備品と廃棄した備品のうち、どちらに調整が必要かを自分で見分ける問題でした。転用調整と変動調整のどちらになるかも判定させる形です。

第3問は、設立から3期分の納税義務の判定と、仕入税額控除の計算方法の判定です。資本金が小さい新設法人が、期中に増資し、簡易課税を選ぶ設定でした。

第4問(50点)は、確定申告書における納付すべき消費税額を、課税標準額から計算する総合問題です。論点を拾うと次のようになります。

  • 税込経理で、取引総額を割り戻して計算する前提
  • 軽減税率と、売上値引・返品の処理
  • 身体障害者用物品の取引区分
  • 課税売上割合の計算と、個別対応方式か一括比例配分方式かの有利選択
  • 適格請求書と少額特例に関する前提

判断を求められる箇所では、理由も書く指示がありました。計算の途中で一度つまずくと、その先の数字が全部ずれます。

2級・3級と、所得税法・相続税法の構成

ほかの級も、大問の構成と配点を表にまとめます。

試験 大問の構成と配点 内容
法人税法2級20点・20点・60点語群から選ぶ穴埋め/同族会社の税務調整/中小法人の総合問題
法人税法3級20点・20点・60点語句の選択/交際費等の税務調整/納付すべき法人税額
所得税法1級20点・10点・15点・15点・40点用語の穴埋め/所得区分/所得控除/源泉徴収/確定申告の課税所得
所得税法2級20点・20点・60点語群の穴埋め/不動産所得/申告納税額
所得税法3級24点・16点・60点所得の種類の判定/○×/総所得金額に対する税額
消費税法1級20点・15点・15点・50点用語の穴埋め/固定資産の調整/納税義務の判定/納付税額の総合計算
消費税法2級20点・20点・20点・40点語群の穴埋め/取引区分/納付税額(2問)
消費税法3級20点・20点・20点・40点語句の選択/取引区分(非課税・軽減税率)/簡易課税/納付税額
相続税法1級20点・20点・60点区分所有財産の評価/農地等の納税猶予/相続税額の総合計算
相続税法2級20点・20点・60点○×/贈与税額/相続税額の総合計算
相続税法3級20点・20点・60点○×/民法上の相続人と相続分/相続税額の計算

2級と3級の多くは、最後の大問に60点(消費税法は40点)が置かれています。第120回は、計算問題の比重が大きい構成でした。所得税法1級だけは5問構成で、配点が分散しています。

難易度の見立て: 第4問を落とせない1級

1級の難しさの核は、最後の総合問題にあります。法人税法と消費税法の1級は、第1問から第3問までの配点を足しても50点です。合格点は70点なので、最後の第4問で最低でも20点を取らないと、他が満点でも届きません。

しかも第4問は、多くの論点がまとまった総合問題で、計算の途中でずれると後ろの数字が連鎖して崩れます。時間は90分で、配点が半分なので、第4問には時間も半分は残したいところです。第1問から第3問の取りこぼしを減らして、第4問にどれだけ時間を回せるかが分かれ目になると読んでいます。

ここからは僕の見立てです。今回の消費税法1級は、調整対象固定資産の転用・変動調整(第2問)と、設立3期分の判定(第3問)で、判断を要する大問が続きました。そのうえで第4問が来るので、前半で時間を使うと後半が足りなくなりやすいはずです。合格率が5.05%まで下がった一因かもしれませんが、受験者の顔ぶれも関わるので、断定はできません。

検索でよく見かける疑問に、法人税と消費税はどちらが簡単かというものがあります。今回の数字だけでは決められません。第119回は法人税法1級が24.26%、消費税法1級が41.05%で消費税のほうが高く、第120回は逆に法人税法1級が20.62%、消費税法1級が5.05%でした。2回分のデータだけで税目の難しさを決めるのは危険です。

次回に向けた勉強の絞り方

次の回に向けて、僕が力の入れどころを決めるとしたら、次の3つです。

  1. 総合問題(第4問)を最優先にする。第1問から第3問は、取れるところを取りこぼさない練習をする
  2. 第1問は条文の言い回しで覚える。条文の用語で答えるよう指示された設問では、意味が合っていても言い回しが違うと点にならない恐れがある
  3. 改正を反映した問題に当たる。所得税法の問題用紙(1〜3級とも)には、令和8年4月30日現在施行の法令に準拠して出題すると書かれていました。法人税法1級には、防衛特別法人税を考慮しなくてよいという指示も付いていました

過去問は、全国経理教育協会が出しているものがあります。所得税法・法人税法・消費税法の過去問題集(解答解説付きの冊子)は毎年7月発刊で、翌年3月まで販売されています。相続税法は冊子の対象外です。回ごとのPDF過去問もありますが、解説は付いていません。

よくある質問

第120回の解答速報はありますか?

全国経理教育協会の公式ページには、解答速報の記載を確認できませんでした(2026年11月7日時点)。

合格基準は何点ですか?

各級とも100点満点で、70点以上が合格です。

合格率はどこで確認できますか?

全国経理教育協会の「受験データ・合格率」のページで、回ごと・級ごとに確認できます。この記事の表も同じページの数字です。

過去問はどこで手に入りますか?

公式の過去問題集(冊子)が所得税法・法人税法・消費税法で販売されています。回ごとのPDF過去問もあり、こちらは解説が付いていません。

追伸: 1級を目指す人へ

第120回の分析を読んで、1級の勉強法を具体的に知りたい人は、税目ごとの記事に書いています。