この記事には広告を含む場合があります。

「国内子会社の経営管理、もっと効率的に、そして戦略的に進めたい…」
そうお考えの経理実務者の皆さま、日々の業務でこのような課題に直面していませんか?
本記事では、多岐にわたる子会社の経営管理業務を、ベテラン経理の視点から深掘りし、あなたの悩みを解決へと導きます。
「経営管理」という仕事について、以下のようなイメージをもっている方もいるのではないでしょうか。
- 経営層の直属の部隊
- 数値の取りまとめ役
- 会議の進行役
僕は、上記のようなイメージをもっていました。しかし、実際に経験した子会社経営管理には、思っていたよりずっと幅広い仕事が存在し、経理業務については実際に手を動かすことも多かったです。
- 原価計算
- 収支管理
- 資金繰り
- 税務管理
- 計算書類作成
- 連結パッケージ入力(Stravis)
「経営管理」という仕事は会社によって内容が全く異なります。
僕が担当した子会社は、別企業から買い取った工場を子会社化した為に経理部が存在せず、財務会計の経理業務も兼ねることになったため、上記のような幅広い経理業務を担当することとなりました。
経営管理の目的は「各企業が活動をスムーズに行えるようにすること」だと考えます。
この記事では、国内の子会社の経営管理業務について概要を紹介します。経営管理という業務は多岐にわたりますが、一例として読むことで、経営管理のイメージが浮かべば幸いです。
子会社の経営管理とは

子会社の経営管理は、親会社が子会社の事業活動を監督し、全体としてグループの目標達成を支援する重要なプロセスです。
具体的には、以下のような多岐にわたる業務を含みます。
- 原価計算
- 収支管理
- 資金繰り
- 税務管理
- 会社法計算書類作成(決算開示)
- 連結パッケージ入力(Stravis)
これらの業務を通じて、子会社は健全な成長を遂げ、グループ全体の価値向上に貢献するのです。
僕が考える経営管理は、「企業が円滑に活動を運営するために必要な数値や活動の管理・運営を行う」仕事です。この定義に当てはまる業務は企業によって異なるため、定型的な業務ばかりではないです。例えば、収支管理を行うさいでも、経費削減が必要ならば、「生産に影響が出ない範囲で」抑制を依頼します。
以下では、主な業務について解説していきます。
国内子会社の経営管理業務

国内子会社の経営管理は、グループ全体の羅針盤となるべく、多角的な視点から業務を遂行する必要があります。
ここでは、特に重要な業務について詳しく解説します。
子会社の経営管理業務は、担当する子会社の状況によって大きく変わります。僕が担当していた企業を例として解説します。以下のようなメーカー(工場)です。
- 部品メーカー
- 他社から工場買い取り、子会社化→経理部門なし
- 材料は親会社経由で購入
- 製造品の販売先はすべて親会社
原価計算
原価計算は、製品を作成するためのコストを計算する業務です。メーカーではコストがそのあとの販売戦略や購買戦略に大きな影響を及ぼし収益にも直結するため、非常に重要な業務となります。原価計算は、製品やサービスのコストを正確に把握するための、製造業やサービス業における基盤となる業務です。
正確な原価計算は、価格設定の根拠となるだけでなく、コスト削減の機会を見つけ出す上でも不可欠となります。
具体的には、以下の要素を考慮して原価を算出します。
- 材料費
- 労務費
- 経費(製造間接費など)
これらの情報を適切に管理することで、経営戦略の立案に大きく貢献できるでしょう。
原価計算を行った後、その数値をもとに各部門に働きかけ、以下のような行動につなげます。
- 製品分析(モデルミックス決定)
- コスト削減
- 価格戦略

原価計算業務については、ベテラン経理が業務内容を紹介:原価計算で詳細を解説していますので、そちらを参照ください。
収支管理
予算進捗を見ながら収支管理を行います。数値をまとめるのが仕事ではなく、数値を明確にすることで経営層が必要な政策を行う検討材料を提供し、各期の収支計画を達成することが目的です。
工場が収支対策としてできるのは、主に以下の通りです。
- 売上管理
- 予算管理
- 原価管理
僕が担当していた工場は親会社向けの売上のみだったため、売上数量の決定権は本社側にあり、実質的には「予算管理」と「原価管理」の2つが管理項目でした。そのため、期初の経費予算の策定および期中の予算管理は費目別に細かく管理を行い、収益を計画通りに着地させることを意識していました。

収支管理は、子会社の経営状況を「見える化」するための要となる業務です。
日々の収益と費用を適切に管理し、定期的に分析することで、経営の健全性を保つことができます。
収支管理では、以下の点に注目して分析を行います。
- 月次損益計算書(PL)の作成と分析
- 予算と実績の比較
- 採算性の評価
これにより、早期に経営課題を発見し、適切な対策を講じることが可能になります。
売上管理は、単に実績を集計するだけではなく、以下のような情報を得ながら見込を行うことも含まれます。
- 所要変動にともなう売上の増減
- モデルミックスの変動による利益の増減
予算管理は、期初に決定した予算内で収まるように費用を管理し、経営計画を達成することです。「費用を管理」といっても、ひたすらに費用を削減すればいいわけではなく、生産活動を最大限行いつつ費用を最小化するよう、バランスをとることが必要です。

メーカーの本業は「製品を作る」ことです。
管理部門で数値ばかり触っていると忘れがちなので、常に意識しています。
資金繰り
資金繰りは、企業の血液ともいえる資金を管理する、守りの要の業務です。利益が出ていても、資金繰りがまわっていなければ「黒字倒産」となるからです。そのため、月単位、場合によっては週単位で資金の入出金を見込み、実績を管理し、想定通りの残高を残すことに細心の注意を払います。
資金繰りは、会社の血液ともいえる資金の流れを管理し、会社が安定的に事業を継続できるよう維持する重要な業務です。
特に子会社においては、親会社からの資金援助だけでなく、自社での資金創出能力も問われます。
資金繰りを適切に行うためには、以下の要素が重要です。
- キャッシュフロー計算書の作成
- 資金予測と実績の管理
- 借入金の管理と返済計画
資金ショートを未然に防ぎ、事業活動を円滑に進める上で不可欠な業務です。
- 支払能力の維持
- 事業の継続性の確保
- 黒字倒産のリスク回避

資金繰り業務の中で、特に以下の項目の金額規模が大きいため、入金サイトや支払サイトを正確に理解し管理する必要があります。
- 売上→売掛金の入金時期(例:月末締め90日後入金)
- 費用→支払時期(例:月末締めの10日払い)
- 税金→納付時期(例:法人税 事業年度終了の日の翌日から2月以内)

資金繰りは、収支(売上・費用)税務(税金)等、他の業務とも密接にかかわっています。
現在は、支払いの際に相手先が「適格請求書発行事業者」であるかどうか、請求書に適格請求書発行事業者番号(Tから始まる13桁の番号)が記載されているかの確認も必要となりました。
支払を行う際の主なチェックポイントは、以下の通りです。経理部門としてのチェックを少なくするため、チェックリストを各部門に配布して、支払の申請を行う際は事前確認してもらっています。
- 支払金額が請求書と一致しているか
- 課税区分があっているか(誤りの例:税込額を税抜額として入力 等)
- 請求書または領収書:適格請求書発行事業者番号(Tから始まる13桁の番号)が明記されているか
- 社内承認が済んでいるか
- 請求書の期日切れとなっていないか
税務管理
税務管理は、各種の税金を管理・申告を行う業務です。特に金額の大きい税金については、資金繰りとも密接に関係します。
税務管理の目的は以下の通りです。
- 税金の支払漏れや過少申告等による追徴税額等のリスク回避
- 適正額で税金申告するための適切な収支管理による経営改善
- 過大な税金を納めることを防ぐことでの削減

税務管理は、国や地方自治体に納めるべき税金を適正に計算し、申告・納税する業務です。
税法は複雑であり、常に改正が行われるため、最新の知識を持って対応する必要があります。
主な税務管理業務は以下の通りです。
- 法人税、消費税などの計算と申告
- 税務調査への対応
- 税制優遇措置の活用検討
適切な税務管理は、コンプライアンスの遵守はもちろん、節税対策にも繋がり、会社の財政基盤を強化します。
企業では主に以下の税金の金額が大きく、日々の業務の中で意識するとともに、決算や申告の際には正確に計算を行う必要があります。
- 消費税
- 法人税
法人税、消費税について概略を学習するならば、「税法能力検定」がおすすめです。申告書の流れと必要な知識を身に着けることができます。詳細は【1級合格者が紹介】税法能力検定とは?0から始める学習法で解説しています。
会社法計算書類作成(決算開示)
会社法計算書類の作成は、株主や債権者などの利害関係者に対し、会社の財政状態や経営成績を報告する重要な業務です。
会社法に基づき、正確かつ適時に作成・開示する必要があります。
作成する主な計算書類は以下の通りです。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
これらの書類は、会社の透明性を高め、社会からの信頼を得る上で欠かせません。
会計基準や実務指針を都度確認するのは当然ですが、注記においてどのように表現するか、明文化されていない部分が多く判断に迷う部分も多いです。
例えばリースや退職給付等、基準自体が複雑な項目もあります。その場合は以下を参照しながら、会計士と相談することとなります。
- 会計基準や実務指針の参照部分
- 他社の開示事例
とはいえ、会計士も複数の会計監査を同時に行っており、なかなか回答が来ない場合があります。
迷う論点は早めにピックアップして、時間に余裕をもって質問しておく必要が重要です。

注記表は「参照」程度に思っていたら、かなり細かく記載のルールが決まっていて驚きました。

上場企業ではキャッシュフロー計算書も義務化されています。キャッシュフロー計算書は上記の帳票との数値の関連が一目ではわかりづらいので、間違いがないよう、慎重に作成・検証を行う必要があります。
連結パッケージ入力(Stravis)
連結パッケージは以下のような目的で、連結決算を行う企業で使用されているシステムです。
- グループ会社のお知らせ情報収集
- 連結財務諸表作成の基礎データ作成
- 内部取引の消去データ収集

僕が働いている企業はStravisを使用して連結を行っていました。
連結パッケージ入力は、親会社がグループ全体の財務状況を把握するために、子会社から財務情報を収集し、連結決算システムに入力する業務です。
「Stravis」のような連結会計システムを使用することが一般的です。
連結パッケージ入力における主要な業務は以下の通りです。
- 親会社からの指示に基づいたデータ収集
- 連結会計システムへの入力
- 親会社との連携と差異調整
これにより、グループ全体の経営状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すことが可能になります。
以下のような項目を間違えるとグループとしての連結決算に影響をおよぼすため、特に注意して集計、入力を行っていました。
- グループ内企業向け債権債務残高
- グループ内企業向け売上・仕入高

連結グループ内でも各社で違った会計システムを使っている場合もあり、差異が出てくる場合があるのでかなり神経を使いました。
決算開示業務は、会計基準の変更や税法による影響を正確に反映する必要があるため、適用時期を都度確認して、おく必要があります。
どの資格・知識が経営管理業務に生かせるか

経営管理業務は多岐にわたるため、幅広い知識が求められます。
ここでは、経営管理業務に特に役立つ資格と、知識習得におすすめの本をご紹介します。
子会社経営管理に活用できる資格
子会社経営管理には幅広い知識が要求されるため、活用できる知識は多いです。資格と実務の関係は以下の通りです。
- 簿記・原価計算→原価計算・収支管理・会社法計算書類・連結パッケージ
- FP→資金繰り・税務管理
- 税法能力検定→税務管理・計算書類
- Mos(Excel)→経営管理業務全般(特に原価計算・収支管理)

時間がない社会人は通信講座がおすすめです。
迷ったらまずは簿記かFPから、通信講座で学習しましょう
子会社の経営管理に携わる経理実務者にとって、専門知識を証明する資格は大きな強みとなります。
実務に直結し、キャリアアップにも繋がる資格は、まさに「知の武器」と言えるでしょう。
特に役立つ資格は以下の通りです。
資格名 | 概要 | 経営管理業務との関連性 |
日商簿記1級・全経上級 | 高度な会計処理と財務分析能力を証明 | 財務諸表作成、原価計算、経営分析の基礎 |
公認会計士 | 監査、会計に関する専門家 | 内部統制、会計監査、財務アドバイス |
税理士 | 税務に関する専門家 | 税務申告、税務相談、節税対策 |
中小企業診断士 | 経営全般に関するコンサルティング能力を証明 | 経営戦略、事業計画、経営改善アドバイス |
FP(ファイナンシャルプランナー) | 資産運用、ライフプランに関する知識 | 資金計画、投資判断、リスク管理 |
これらの資格は、あなたの専門性を高め、経営管理業務においてより貢献できる人材へと導くでしょう。
簿記検定については、【口コミ有】スタディングで簿記2級に合格!通信講座で初心者でも合格できる方法を解説、FP試験については【3万円以下】スタディングFP2級講座を活用してスキマ時間で合格する方法(口コミ7選紹介)!を参照ください。
経営管理に活用できる知識を得られる本
経営層の意思決定のために、さまざまな数値をまとめる必要があります。その際に必須なのがExcelスキルです。Mosの知識はもちろん有効なのですが、そこから一歩進んだ実践スキルを身に着けるには、「エクセルで学ぶビジネスシミュレーション超基本」がおすすめです。著者の熊野整さんは外資系投資銀行で働いていた方で、売上や利益の感応度分析や相関分析等、Excelについて非常に実践的な内容を説明しています。
熊野整さんは、Udemyでもエクセルで学ぶビジネス・シミュレーション講座を開講しています。実際に操作して説明してくれるのと、作業用のExcelファイルももらえるので、実務に使える形でスキルを身に着けやすいです。
僕は、バリュードライバの変動に対応したExcelの作成方法がとても有益だと感じました。
資格取得と並行して、実務に役立つ知識を深めるためには、良質な書籍から学ぶことも非常に重要です。
本は、先人たちの知恵と経験が詰まった「宝の地図」のようなものです。
特におすすめしたいのは、以下のジャンルの書籍です。
- 会計基準に関する解説書: 最新の会計基準を理解するために不可欠です。
- 税法に関する入門書: 税務の基礎知識を身につけることができます。
- 経営戦略やマネジメントに関する書籍: 経営管理の全体像を把握し、戦略的思考を養えます。
- 実務に役立つExcel活用術: データ分析やレポート作成の効率化に繋がります。
これらの書籍を通じて、多角的な視点から経営管理を捉えることができるようになるでしょう。
まとめ:経営管理は会社全体を見渡し運営をサポート
この記事では、国内子会社の経営管理業務について具体的に紹介してきました。
- 会社の運営をスムーズにするために様々な業務を行う
- 対外的な資料を作成(対親会社も含む)
経理実務者にとって、子会社の経営管理は、単なる数字の管理を超え、会社全体の運営をサポートする重要な役割を担います。
正確な情報に基づいた意思決定は、企業の成長を促す「エンジン」のようなものです。
この記事で最もお伝えしたかった重要なポイントは以下の3点です。
- 子会社の経営管理は、原価計算から連結パッケージ入力まで多岐にわたる。
- 経営管理業務には、簿記や税理士などの専門資格や幅広い知識が有効である。
- 適切な経営管理は、企業の健全な成長とグループ全体の価値向上に貢献する。
業務分野 | 関連資格・知識 |
会計・財務 | 日商簿記、公認会計士、会計基準 |
税務 | 税理士、税法 |
経営戦略・分析 | 中小企業診断士、経営戦略論 |
システム・IT | Excel活用術、連結会計システム知識 |
子会社の経営管理に携わる皆さんの業務は、まさに会社の未来を形作る重要な仕事です。経営管理業務を行うためには、広く知識を得ておくことが重要です。実務に役立つ資格については、【未経験~現役経理必見】実務に役立つ経理資格のおすすめ取得順を紹介!で紹介しています。