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海外子会社の月次管理を一言でいうと、「現地から届く月次PLを整理し、見込との差異を分析して、本社へ報告する仕事」です。
僕は東南アジアにある海外子会社(実装拠点)の月次収支管理を、日本側から3年担当しています。実際の月次は、締め後3営業日で届く速報値を約30分で整理し、現地幹部と相談したうえで、1日以内に日本側へ報告するという流れです。そして意外かもしれませんが、日々のやりとりは現地の日本人幹部との日本語が中心でした。
この記事では、これから海外子会社・海外拠点の管理を任される(または任されたばかりの)経理・経営管理担当の方に向けて、次の3点を解説します。
– 月次報告の実際の流れ(締め後3営業日の速報値から、1日以内の報告まで)
– 報告通貨と為替の扱い(USD報告・月次の実勢レート)
– 僕の失敗談(最新でない数値が、そのまま日本に報告された話)
海外子会社の月次管理とは?担当3年の僕がやっていること
まず全体像からお話しします。僕が月次でやっている仕事は、大きく3つです。
1. 英語PLの整理: 現地から届く月次PL(英語フォーマット)を、経営管理用に整理する
2. 差異分析: 前月に立てた見込と実績の差異を分析する(見込対実績が中心)
3. 本社報告: 日本側の報告フォーマットに落とし込み、報告する
担当しているのは、東南アジアにある実装拠点です。1,000名を超える生産拠点で、経理部だけで20名います。財務は現地の日本人取締役とローカルスタッフが担う体制です。
一方、日本側の管理体制は少人数で、僕がこの拠点を担当し、ベテランの先輩が別の海外拠点(中国)と全拠点のとりまとめを見ています。「1拠点を1人で見る」のが基本の形です。
月次報告の流れ:締め後3営業日の速報値から1日で報告まで
僕の担当拠点の月次は、次の流れで回っています。
【図解】月次報告の流れ(締め後3営業日+1日)

1. 現地経理が速報値を作成(締め後3営業日): 月次PLの速報値が僕のところへ届きます
2. 経営管理用に数値を整理(約30分): 報告に必要な形へ数値をまとめます
3. 現地の日本人幹部と相談: 整理した数値を共有し、「次月以降の見込にどう反映するか」まで話します
4. 報告フォーマットへ転記し、提出: 速報値の受領から1日以内に、日本側への報告まで終わらせます
ポイントは、締め後3営業日+1日というスピード感です。月次の数字は鮮度が命で、報告が遅れるほど「その数字を見て打てる手」が減っていきます。本社報告の日程への考慮もありますが、僕は、速報値が届いたらその日のうちに動き切ると決めています。
もう1つ、正直に書いておきたいことがあります。この流れの2〜4は、本来なら現地で完結すべき仕事です。現時点では現地にその機能がないため、日本側の僕がサポートしています。ただし「機能がない」の意味は、注意して受け取ってほしいので次の章で説明します。
「経理」と「経営管理」は別の機能
「現地に機能がない」と書きましたが、人がいないわけではありません。経理部だけで20名おり、記帳や決算は現地でしっかり回っています。
育っていないのは、見込の算出・差異分析・本社への報告という「経営管理」の機能です。決算を正しく締める「経理」と、数字から先を語る「経営管理」では、必要なスキルが違います。そして経営管理の担い手は、経理部の人数を増やしても自動的には育ちません。
これは海外だから起きる話ではなく、日本の会社でも普通に起きています。「決算は締められるのに、予実の説明ができる人がいない」という、あの状態です。
国内子会社の経営管理については、[子会社の経営管理とは?業務内容と役立つ資格を現役経理が解説](https://kotsukotsukeiri-shikaku.com/explanation-of-management-control-of-subsidiary-company)で詳しく書いています。
僕自身、国内の工場で経営管理を経験してから海外担当になりました。「決算を締める力」と「数字で先を語る力」は本当に別物で、後者は場数でしか育たないというのが実感です。
だからこそ、現地に経営管理が育っていないのは「能力の問題」ではなく「経験の機会の問題」だと思っています。
報告通貨と為替の扱い
海外子会社の月次で、国内と大きく違うのが通貨と為替です。僕の担当拠点の運用は次のとおりです。
– 報告通貨はUSD: 現地通貨ではなく、USDベースのPLで報告します
– 為替差損益は月次の実勢レートで算定します
– 連結経営管理システムでは、半期累計の現地通貨を期中平均レートで毎月評価替えします
仕組みだけ見ると難しそうですが、月次の実務では「決まったルールに沿って回すもの」です。
これから担当になる方は、①自社の報告通貨 ②適用レート ③評価替えのタイミング、の3点を最初に確認しておくと立ち上がりが速くなります。差異分析のとき、為替の影響と事業実態の変化を切り分けて説明できるかどうかで、報告の質が大きく変わるからです。
失敗談:最新でない数値が、そのまま日本に報告された
海外拠点の管理で一番苦労したのは、為替でも英語でもなく、「どれが最終版の数字か」の共有でした。
あるとき、現地の幹部同士で意見が合わず、報告に使う数値がころころ変わっていた時期がありました。その結果、最新ではない数値が報告数値として日本側に上がってしまい、あとから辻褄を合わせるのに大変な苦労をしました。
同じフロアで働いていれば、「その数字、古くないですか?」と一声かけて済む話です。物理的に離れていると、この「最終版の共有」が想像以上に崩れやすくなります。
この失敗のあと、僕は運用を変えました。報告の前に関係者(最低でも、その中の最高権限者)とTV会議をつなぎ、提出フォーマットの数値そのものを画面で見せて、「この数値が最終です」と確認するようにしたのです。
メールで「最新版を送ります」と書くのではなく、提出する数字そのものを一緒に見る。地味ですが、「どれが最終か」を数字そのもので握ることが、距離を越える一番確実な方法だと思っています。
業務着任時から変えたこと:「率で機械的に作る見込」からの脱却
僕が着任した当時、収支見込は「生産台数から機械的に率で変動させた値」でした。生産台数の増減に一定の率を掛けて、費用を動かすという作り方です。これでは、現場で実際に起きていることが見込に反映されません。
現在は、現地の日本人幹部と連携し、内容を考慮して見込を算出するようになりました。中期計画についても、日本側の生産台数の変動に応じてタイムリーに報告できるよう、全面的にサポートしています(これは今も継続中です)。変化のきっかけは、現地へ赴任する日本人幹部が増えて、相談できる相手ができたことでした。
ここで大事にしているのは、「これは代行ではなく、引き継ぎの途中だ」という位置づけです。僕の仕事のゴールは、現地が自走できる体制を作ること。つまり、僕がやらなくてもよくなることです。月次のサポートも見込の相談も、すべて「現地でできるようになるまでの伴走」だと考えています。
「自分がいないと回らない仕事」は、一見すると存在価値の証明に見えます。でも経営管理の仕事では逆で、「自分がいなくても回る仕組みを作った人」が次の仕事を任されるというのが僕の実感です。
英語はどこまで必要か
これから海外子会社の担当になる方の一番の不安は、おそらく英語だと思います。僕の実態をそのまま書くと、日々のやりとりは現地の日本人幹部との日本語が中心です。
一方で、現地から届くPLは英語フォーマットです。つまり僕に必要だったのは「英語で交渉する力」ではなく、「英語のPLを読む力」でした。PLで使われる勘定科目の英語は種類が限られているので、簿記の知識があれば十分キャッチアップできます。
ただし、これは「現地に日本人幹部がいる体制」だからこその実態です。拠点の体制によって英語の必要度は大きく変わるので、着任前に「日々誰とやりとりするのか」を確認しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外子会社の管理担当になったら、海外赴任するのですか?
A. 会社の体制によりますが、僕は日本にいながら海外子会社を管理しています。「海外拠点の担当=赴任」とは限らず、日本側から管理する働き方もあります。
Q2. 海外子会社の月次管理には、どんな資格・知識が役立ちますか?
A. 土台になるのは簿記の知識です。月次PLを読み、見込対実績の差異を説明する仕事なので、PLの構造が頭に入っていることが前提になります。加えて、生産拠点の管理なら原価計算の知識が直結します。原価計算の実務は[原価計算の仕事内容とは?メーカー経理の実務を経験者が解説](https://kotsukotsukeiri-shikaku.com/explanation-of-cost-accounting-business-in-accounting-section)で解説しています。
Q3. 国内子会社の経営管理と、何が一番違いますか?
A. 月次PL・差異分析・報告という基本の型は同じです。違うのは、①通貨と為替換算が挟まること ②資料が英語になること ③「どれが最終版か」の共有が距離のぶんだけ崩れやすいこと、の3点だと感じています。
まとめ:月次管理のゴールは「自分がやらなくてもよくなること」
– 海外子会社の月次管理は、「速報値の整理→差異分析→本社報告」が基本の型。僕の場合、締め後3営業日で届く速報値から1日以内に報告まで終わらせている
– 現地に経理部が20名いても、「経営管理」は別の機能。育っていないなら、日本側が伴走しながら自走できる体制を作っていく
– 一番の落とし穴は「どれが最終版の数字か」の共有。提出フォーマットの数値そのものを画面で見せて確認する
– 英語より先に、PLを読む力。日々のやりとりが日本語中心という体制もある
海外子会社の管理は、「大変そう」と構えるより、月次の型を1つずつ押さえていくのが近道です。任されたばかりの方は、まず自分の拠点の「月次スケジュール」と「報告通貨・適用レート」を確認するところから始めてみてください。
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